神、この人間的なもの

神、この人間的なもの―宗教をめぐる精神科医の対話 (岩波新書)

神、この人間的なもの―宗教をめぐる精神科医の対話 (岩波新書)

aufhebenさんに触発され、なだいなだ氏の著作を10年ぶりに読みました。
相変わらず簡潔な文章ながら、決して二言三言ではまとめあげられない、深い示唆に富む話でした。


この10年間ほど、氏の著作に触れなかったのですが、知らないうちに老人党なるものを立ち上げてて、
なんだかこういう方が今の時代にお元気でいらっしゃることがすごく頼もしかったです。

それにしてもショックだったのは、この本の(氏の昔の著作よりもまだ軟らかい)内容に
”え、そこまで言っていいの?”と、ビビってる自分がいたことでした。
知らず知らずのうちに、”声の大きなほう”に流されていたようです。
昔は、健全な天邪鬼が信条だったのに、つくづく人間一人の精神というものはかくも弱いものなるかな…。

T「おまえは宗教が前から引っ張っていると思っているようだが、信じるものは、自分自身の《不安と絶望》に後ろから押されて宗教と出会うのだよ」
B「《不安と絶望》?後ろから押されて?」
ぼくはかれの言葉を繰り返した。《人間は前から理性に引っ張られて進むように見えるが、意思に後ろから押されている》というショーペンハウアーの言葉が頭を過ぎった。

分かっていたつもりでも、改めてこの一言にうなってしまいました。
この先も無神論者で宗教に入ることはないだろうけど、論理で構築された理性の限界を知るほどには
十分に大人になったと思ってはいたんですがねぇ。